医療用縫合針・縫合糸メーカーの株式会社 河野製作所 所在地:千葉県市川市曽谷 商品販売会社:クラウンジュン・コウノ CROWNJUN

設立50周年記念 設立50周年記念

社員座談会 ~次の50年に向けて~社員座談会 ~次の50年に向けて~

工場の片隅のとある部屋で、製造の自動化を推し進めるエンジニアたちが活躍している。
職人技とも言える微細加工技術の効率化や省力化を図り、
品質の安定化に貢献するものづくり生産技術課の4名に、自動化に対する想いを訊いた。

  • 浅野 良太 課長

    浅野 良太

    2010年入社。入社直後から未経験であった自動機の開発に着手。現在つくば工場で稼働しているほぼすべての自動機の開発を担当。

  • 小玉 将 リーダー

    小玉 将

    2014年入社。入社以来、自動機の開発を担当。細穴針専用の自動ドリルを開発し、2019年に中小企業優秀新技術新製品賞 奨励賞を受賞。

  • 内山 一樹  

    内山 一樹

    2017年入社。針製造の生産管理担当を経て、ものづくり生産技術課へ異動。現在は製造装置開発の技術の習得に励んでいる。

  • 中山 未夢  

    中山 未夢

    2020年入社。クリーンルーム内での製造全体の管理担当を経て、ものづくり生産技術課へ異動。製造装置開発の技術の習得に励んでいる。

DISCUSSION01

設計、組立から改良まで。
全てが経験できる場所。

― みなさんの入社のきっかけを教えてください。

浅野
僕は中途入社ですが、前職は装置メーカーで機械を作る仕事をしていました。装置メーカーは機械を作って売ったら終わり。でも、河野製作所は自社内で使う機械を作るので、作った後も面倒を見ていけるところに魅力を感じました。
内山
その頃にはもうものづくり生産技術課はあったんですか?
浅野
当時は技術開発課という名前で、新製品開発のメンバーと同じ部署だったよ。
最初は既存製品の製造技術を学びながら、自動化されていない機械の管理や増産を担当していた。その頃はもうオリジナルの加工機がたくさん存在していたんだよね。
小玉
僕も前職は装置メーカーの設計担当でした。でも本当は設計以外の仕事にもチャレンジしたいと思っていて。ここならいろいろできるかもしれないと思ってこの会社に入社したんです。
内山
僕はもともと自動機を作りたかったわけではなく、一から自分で考えて製品化するような仕事がしたいと思っていました。自動機開発に興味を持ったのは、本社見学のときに浅野さんを見てからです。
中山
私はものづくりが好きで、学生時代は機械科で医療機器の分野の研究室に入っていました。自分が作った機械が働くのを近くで見られるのは、魅力的だな思って入社しました。

DISCUSSION02

「何年かかっても良いからやってくれ」
と言われて始まった自動化への挑戦

中山
浅野さんが自動針製造機の1号機を作ったのは、入社されてどのくらい経ってからですか?
浅野
完成したのは入社して5、6年経ってからだね。入社したころは、まだ手作業の工程がほとんどで、機械の方が早いし確実だなという工程がいくつもあった。今では多能工化も進んでいるけど、当時は一人の職人が一つの工程を担当していて、その人が休んでしまうと生産がストップしてしまう状況だったし、最初に工場を見た時は衝撃だったね。
中山
5、6年もかかって、途中で急かされることはなかったんですか?
浅野
いや、逆に「何年かかってもいいから自動機を作ってくれ」という感じで、時間をくれたんだよね。当時は機械を一から作った経験がなかったのに自動機を作っているのは僕一人で、他にやっている人が社内にいなかったから全然上手くいかなかった。下積み時代が長くて、いつかクビになるんじゃないかと思っていたよ。(笑)
社長も3年くらい経った頃から、浅野は何しているんだろうってちょっと気にしていたみたいだけど「いつになったら出来るんだ」と言われることはなくて、いつかできるのを待ってくれていた。結局、今の様に針製造のほぼ全工程を自動化するには10年近くかかったけど、生産性の向上に寄与できて、実績を評価してもらっているよ。
小玉
普通の会社だったら、中途社員にはすぐに結果を出すように求めてきますよね。
内山
2号機、3号機の製作は順調だったんですか?
浅野
2号機以降は製作時間は短くなったけど全く同じものを作ったわけではなくて1号機の反省を踏まえて改良しながら作った感じだね。
小玉
作り手としてはOKでも、使う側からの意見もあるし、1号機で見えてきた反省点を改良しながら作れましたよね。
浅野
それと、機械で重要なのは止まらないことなのに、夜、機械を動かして帰っても、エラーが起きて翌朝出社すると止まっていることがあった。
内山
多品種を生産しているからこそ人間は柔軟に対応できても機械にやらせるのは大変ですよね。
浅野
そう。1つの機械でたくさんの品種をカバーしたいから、少し欲張った機械になっている。
言い訳なんだけどね(笑)。

DISCUSSION03

人を減らすためでなく、
生産量を上げるために自動化がある。To increase production

中山
小玉さんはこれまでどんな機械を開発されてきたんですか?
小玉
最初に開発したのが細穴ドリル機なんだけど、完成までかなり大変だった。
中山
中小企業優秀新技術・新製品賞で受賞した機械ですよね。
小玉
そう。設計しかしたことがなかったので、産みの苦しみを思いっきり味わったね。
中山
浅野さんに相談しながら作られたんですか?
浅野
特別何かを教えたりはしてないよね。もちろん聞かれたら答えていたけど、僕から何かを言ったわけでもなかったと思う。
小玉
分からないことがあれば聞きますけど、まず自分で考えた方が成長につながると思っていて。逆に言うと、行き詰まるまでなかなか人に聞けない癖があります。
ただ、加工技術については長年手作業で行ってきた職人のノウハウがあるのでアドバイスを受けて活かしたり、これまで会社が培ってきた知識や経験がもとになっている部分も大きいですね。
浅野
この分野のことは、インターネットで検索してもあまり情報がないし、とにかく自分で実験したり、壊したりしながら学ぶことが多いよね。機械の修理一つでもかなり勉強になる。

― 現在注力していることはどんなことですか?

浅野
最近、小玉さんは新しい部品加工の自動化にもチャレンジしているよね。
小玉
そうですね。僕が担当するものはいまだに手作業で行っているものが多いですね。その人にしかできないという特殊なものは、自動化しておいた方が良いと思いますし。
浅野
もし生産量を10倍に上げろって言われたら、普通は加工できる人を10人育てないといけない。でもそれは無理だからね。自動化しておけば、機械を増やすことで対応できる。実際、自動化で生産量はアップしているけど、以前から人の数は変わっていないし。
中山
この会社には自動化に抵抗感を持つ人は少ないんですね?
浅野
会社によっては、自動化して人件費を浮かそうと考える会社もあるけど、うちの場合は人を減らすために機械を作っているわけではなくて、今の人数で生産量を上げるために機械を作っているからね。機械でできることが増えたら、その分、人が他の作業に回れたり新製品、新技術開発に力を入れられる。同じ人数を保ちながら成長していけるように努力しているから、反対する声が出ないんじゃないかな。

DISCUSSION04

独自技術を次の世代へ。
自動化への期待値は高い。

― 今後の展望を教えてください。

小玉
今、針の製造に関する機械を作っていて、それをなるべく早く完成させるのが目標ですね。
あとは、機械で作ったものを機械で検査するということにも挑戦しています。これがうまくいけば、品質の安定化にも貢献できると思います。
浅野
僕は組立工程を自動化するための機械。この工程は製造の要でもあるけど一番人手を使っているところなので、いまだに毎日顕微鏡を見ながら作業している。そこを効率化できたら生産性もぐっと上がるはず。
内山
私は包材のシール機2号機の製作を担当しています。今ちょうどCADで設計をしているところです。将来的には、構想を考えるところからやりたいなと思っています。
浅野
そうだよね。今やっているのは、2号機だからね。
中山
私は今、糸の太さを自動でチェックする機械を作り始めています。内山さんと同じで、私も早く全工程を一人でできるようになりたいです。機械は現場の人と一緒になって作っていくものだと思っているので、今はコミュニケーションのとり方や姿勢も学んでいるところです。
浅野
うちの会社は現場に女性が多いし、中山さんは生産技術課で初の女性だから期待されていると思うよ。
中山
現場の人が意見を言いやすいような存在になりたいですね。
小玉
機械でできるようになれば、その製品を誰でもつくれるようになる。そういう機械を作りたいですよね。あとは、マイクロマシーンじゃないですけど、今よりさらに小さな製品が作れる機械を開発できたらと思っていて、機械式の時計を作る機械の資料など、いろいろと収集しているんです。
浅野
僕はクリーンルームに、ロボットがたくさん並んでいるような会社にできたら良いなと思うのと、パッケージングの自動化も実現したいなと思っています。セットしてボタンを押せば、ドクターが使いやすい状態でパッケージングされるという。
内山
あぁ、それすごく良いですね。
浅野
もちろん、なんでも自動化すれば良いというものでもなくて、今まで通り人がやればいい工程もたくさんあると思う。生産数がなければ自動化しても効率が上がらないし、投資をする意味もないから。その辺りを見極めながら、ものづくり生産技術課としてみんなで力を合わせながら会社に貢献していけたらと思っています。