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【法則2】 自分にしかできないことをやる 千葉県市川市に本社を置く河野製作所は、医療用器具の専門メーカー。世界最小の直径0・03ミリ㍍の手術用針を開発して話題になった同社は、マイクロサージャリー(微小外科手術) 用の糸つき縫合針で、国内シェアの6割を占めるトップ企業である。 河野淳一社長は、創業者である祖父から数えて4代目になる。1998年、35歳のときに社長を引き継いだが、当時はすでに、医療費抑制の時代に入っており、社業は傾きかけていた。 まず、河野社長は親族も含む役員全員を説き伏せて辞職してもらい、社内の意識改革を図った。河野製作所のモットーである〝チャレンジ″の浸透を図ったのだ。 そのチャレンジ精神から生まれたのが、世界最小の手術用針だ。開発のきっかけは、河野社長が懇意にしていた大学教授との会話だった。当時、マイクロサージャリーは、500鍔(1∬=0・001ミリ㍍)以上なら可能である 一方、印告以下は細胞操作の世界だった。つまり、50?500呉は手術のできない、いわば〝無医村″だったのである。河野社長は、大学教授から「その範囲を何とかしたいので、協力してくれないか」と相談された。 河野製作所は、時計の針の製造から出発した企業で、微細・精密加工がその技術の核である。 「外科手術が、まったくできない未開の分野がある。それならばやってやろうと、採算は考えずに始めました。あくまで社内の技術力アップが目標でした。微細・精密加工が得意な当社ならば、マイクロサージャリー分野で新たなことができると考えたのです」と河野社長は語る。 開発には3年の年月を要したが、これが河野製作所の技術力に対する評価を一段と高めることになった。この手術用針の開発で、2010年夏には天皇陛下も同社の視察に訪れたほどだ。
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