医療用縫合針・縫合糸メーカーの株式会社 河野製作所 所在地:千葉県市川市曽谷 商品販売会社:クラウンジュン・コウノ CROWNJUN

設立50周年記念 設立50周年記念

小野 稔 先生小野 稔 先生

Profile

1987年東京大学医学部卒業。2009年、東京大学医学部附属病院心臓外科の教授に就任。2013年から医工連携部長を併任。医療機器の開発教育プログラムの責任者として、様々な医療機器開発のアドバイザーも担当する。今までに開発に携わった製品は10件に及ぶ。

CHAPTER01

米国留学と医療機器開発との出会い

 私が大学を卒業した1980年代後半、心臓外科の術後に亡くなる方がまだまだ多く、技術革新が求められていた時代でした。先輩方が苦心していた心臓外科を革新的に良くしたいと考えて心臓外科の道に進むことを決めました。当時、手術件数も多く、先進的な技術で飛躍的に成績を向上させていた米国へ留学し、新しい手技や手術を様々な国の出身の方がいらっしゃる中で学び、視野を大きく広げることができました。
留学先の上司が新しい医療機器開発や手術・手技の開発に前向きに取り組む方で、臨床の傍ら、開発に関する動物実験の手伝い等を行っていました。その当時、開発に協力したもので、今現在でも使用されているものもあります。

 革新的な優れた治療の実施には、新しい医療機器の開発や従来機器の改良が欠かせません。心臓外科を志望した当時から私の根底にある、心臓外科の治療をより良くしたいという思いが重なり、医療機器開発への道を歩んでいくことになりました。

CHAPTER02

東大TRセンターのプロジェクトで
成功例として語られる 「Kashimé」

 河野製作所とのお付き合いが始まったのは、今から10年くらい前になります。縫合操作を簡略化し手術時間の短縮を実現するデバイス「Kashimé」の開発がきっかけです。もともとKashiméは、医療用ロボットでの糸結びが困難であったことから、別の縫合の仕方を考えていたときに思いついたアイデアでした。河野製作所のみなさんには、さまざまな要望に対して迅速に対応していただきました。Kashiméという今までにない新しい製品を世の中に知ってもらうために、開発だけではなく社報や学会での展示ブースで積極的に紹介していただいたからこそ、短期間で商品化できたのだと思います。Kashiméの開発は、同等性製品のないデバイスの発想に始まり、知財の確保、動物実験における安全性と有効性の評価、市場性の調査、最後にPMDAでの最終審査を短期間で完結したことが高く評価されており、東大のトランスレーショナルリサーチセンターのプロジェクトの中でも「成功例」と言われています。

 Kashimé以外にも、これまで数多くの医療機器開発に携わってきましたが、それらに努力を惜しまないのはすべてより良い治療の実現のためです。特にユーザビリティや動作性の改良は、医療の進歩に不可欠と言えると思います。私は、医療機器の開発・改良を通じて、ドクターを笑顔にしたいと考えています。そして当然、その先で患者さんの笑顔に繋がってほしい。医療機器の開発では、要求する仕様は厳しいものになります。今の時代は求められる基準が厳しく、自己満足のデバイスでは意味がありません。実際、河野製作所のみなさんにもいつも厳しい要求をしています。

CHAPTER03

幅広い視点で柔軟に考える。
それが「医工連携」のカギになる。

 異分野の人が自由に発言できる場から、新たな発想や出口が見つかる。その象徴が医工連携です。ここ10年くらいでようやくこの考え方が定着してきました。しかし、まだ文字通りにしか捉えられない人が多いと感じています。「医工」の言葉の概念は広いので、必ずしも医師である必要はなく、看護師、エンジニア、薬剤師、臨床工学士など、幅広い分野の人が関わってフレキシブルに考えることが重要です。私たちのグループでは、医療機器開発を分野を限定せずに多職種で行うようにしています。ただし、自分のニーズやシーズにこだわり過ぎる人がいるとうまくいきません。相手の意見に耳を傾けられる人たちが一緒になってつくり上げることがポイントです。医工連携や医療機器開発においてはコラボレーションが大切で、そのバランスが取れていないと、たいてい安全性やユーザビリティ、価格のどこかがうまくいかなくなります。

 日本はかつて世界で注目された医療機器を数多く生み出してきました。しかし、今では輸入の方が多く、世界に評価される国産のデバイスが減っています。今後、河野製作所をはじめとするものづくり企業のみなさんには、世界に通用する医療機器を生み出してほしい。それが、医療機器開発に携わる人間としての願いです。自分たちの中にアイデアが育ってきたら、世界に打って出る医療機器の開発に共に取り組んでいただけたらと思います。

ドクターインタビューDoctor's Interview

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    玉井 進 先生
    医療法人田北会 田北病院 奈良手の外科研究所 所長
    奈良県立医科大学 整形外科学 名誉教授

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    竹山 政美 先生
    第一東和会病院
    女性泌尿器科・ウロギネコロジーセンター センター長

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    光嶋 勲 先生
    広島大学病院
    国際リンパ浮腫治療センター 特任教授