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ASFLEX開発エピソード

ASFLEX
~新素材でリオペゼロを目指す~

  • 「アスフレックス」 は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂を素材に採用した世界初の心臓血管外科用の糸です。この製品の開発は、新素材との出逢いがきっかけでした。
    当時、心臓血管外科の分野では、縫合の際にポリプロピレン(PP)樹脂の糸を使っていました。ところが、PPは患者さんの体内で劣化が生じます。そのため人工血管と血管の縫合が外れ、リオペ(※再手術)が必要となるケースがしばしば起こり、患者さんにとって大きな負担となっていました。

    合成繊維を多く扱う国内の大手肌着メーカーからPVDFの紹介を受けたのはそんな折です。PVDFはPPにくらべて強度に優れ、長期間劣化しにくく、さらに人体に対し悪い反応が少ない素材ということが分かりました。それにも関わらず、この素材を使った糸は当時まだ市場には出ていなかったのです。PVDFは、PPにくらべて材料費が高く、加工も難しかったことが理由として挙げられます。また、従来のPPの糸で既に一定のシェアが取れている企業にとっては、積極的にリスクを取ってまでPVDFの糸を開発する必要性が低かったのだと思います。

  • 一方、私たちは、それまで心臓血管外科用の針糸の製造は行っていませんでした。失うものがないゼロからのチャレンジだからこそ、あのタイミングで開発をスタートさせる、迅速な決断ができたのだと思っています。
    開発を支えたのは、エンジニアの失敗を恐れずに挑戦し続ける心でした。メーカーにおける研究開発では、膨大な時間と資金を投入したにも関わらず、思い通りの結果が得られず製品化に至らない可能性も十分にあります。また、新素材の投入は薬事承認のハードルが高く販売許可の取得に多くの年月がかかるかも知れません。
    こうしたリスクを考慮すれば、当然、社内からも慎重な意見や反対の声も出てきますが、既にある製品分野の市場に追従者として参加するのではなく、今までになかった製品を開発し、市場を創造していくのが私たちのビジネスモデルです。

    「アスフレックス」 の開発では、高い技術力で加工の難しいPVDFを用いた糸の製品化を実現し、今では日本中の多くの医師から高い評価を得るに至っています。ゼロからの挑戦を通じて市場創造が達成できたことは、とても大きな成果です。それは、失敗を恐れず挑戦した先に、工夫が生まれ、技術が研かれることを肌で感じられる瞬間でした。

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